藤岡弘、が語る究極の修羅場とは。死んでたまるか!サバイバル映画特集


藤岡弘、が語る究極の修羅場とは。死んでたまるか!サバイバル映画特集


覚悟なきものは観るな! 生き残る術は映画と藤岡弘から学べ

ビデオパスでは、「死んでたまるか!サバイバル映画特集」と銘打った企画を実施。この夏配信がスタートした「レヴェナント:蘇えりし者」と「チリ33人 希望の軌跡」の2本を、テレビ番組の「藤岡弘、探検隊」や難民キャンプへの支援活動で知られるサバイバルのプロ・藤岡弘、に鑑賞してもらった。

取材・文/ビデオパスnavi編集部 撮影/佐藤類

「レヴェナント:蘇えりし者」はサバイバルのプロ集団が作った映画

「レヴェナント:蘇えりし者」

──今回は「死んでたまるか!サバイバル映画特集」として、藤岡さんにサバイバル映画2本をご覧いただきました。まず「レヴェナント:蘇えりし者」はいかがでしたか。

藤岡弘、 すごい映画だね。これだけのものは日本では撮れない。どうやって撮ってるのかわからないけど、クマのシーンは恐るべきものがあるね!

──冒頭、主人公のヒュー・グラスがクマに襲われて大けがを負うシーンですね。

僕も山に入るときはクマに遭遇したらどうするかって備えたうえで入るんだけどね。カナダのハンターが教えてくれたんだけど、クマっていうのは銃弾を1発や2発食らっても平気なんですよ。それどころか、余計に怒って凶暴になる。だからみんな、ライフルで急所を外したときのためにマグナム銃も2丁持ってるの。あのシーンでは1発当たってるわけだけど、倒れず向かってきたでしょ。リアルだなあと思ったよ! この映画は、あらゆるところが、サバイバル。僕が「自分だったらこうするな」と思ったことをすべてやってるので、さすがだなと思いましたね。

──主人公は瀕死の状態になっても生き延びて、“蘇えりし者”になるわけですが、彼が死ななかった一番のポイントはなんだと思いますか?

やっぱり、この人がそれまで自然の中で生き抜いてきたノウハウ。僕なんかは小さい頃、四国山脈へ2m、3mの雪の中を父とともにイノシシやシカを狩りに行ったんだ。そこでいろんなサバイバル技術を教わった。それが、僕の中でも一番の根っこになっている。例えば川に飛び込んだとき底の岩に当ってしまって、「ああっ!」っておでこを切ったことがあるんだよ。そのとき父から教わったのは、すりつぶしたヨモギの汁を付けて治すということ。

藤岡弘、

──ヨモギが効くんですね。

僕の手にあるこの傷も、ヨモギで治したんだ。ここも、ほらここも。全部そうですよ。あらゆる経験を積んできて、体で記憶することがいかに大事かということでしょうね。それとこの映画の中で重要なのは、フロンティアスピリッツ。当時のアメリカの人々は過酷な状況を生き抜いてきたということを表現しようとしてるんだ。だからアメリカではかなり話題になったんじゃない?

──アカデミー賞の監督賞、撮影賞、主演男優賞を受賞しました。

やっぱり、そうでしょう! 獲りますよ。アメリカのアイデンティですから。開拓者たちがどれだけ過酷な試練を乗り越えて現在に至っているかという話だから、アメリカ人の血が騒ぎますよ。そういう面では、日本でも同じようにサムライスピリッツを描く映画ができてもいいんじゃないか。俺だったら、やれるなと思ったね。

──藤岡さんは過去に、本作主演のレオナルド・ディカプリオとお会いしたことがあるとか。

ああ、家に写真がありますよ。ジェームズ・キャメロンが「タイタニック」を作ったあとに、「弘、ジャパンプレミアへ来てくれ」って。そこで彼の当時の奥さんのリンダ(・ハミルトン)とディカプリオを紹介してくれた。当時のディカプリオは本当に二枚目で初々しくて。まさかこんなに素晴らしく成長して、ワイルドな役を演じられるとはね。“漢”のほうのオトコになって、アメリカの映画界を支える重鎮になってきたな、と感じるね。

──ディカプリオは、アカデミー賞主演男優賞にこれまで3度ノミネートされていましたが、本作で悲願の受賞となりました。

彼は劇中で、(鞍なしの)裸馬に乗ってたでしょう? あれは難しいんですよ。アカデミー賞を獲るのは当然だと思いますね。とにかく映画全体に説得力があった。専門家の人たちがアドバイザーとして参加してるんだろうな。小道具からカメラワーク、セッティング、すべてにおいて、この映画はプロ集団が作ったなって。例えば、劇中で主人公は銃を大事にして、こまめに手入れしてる。あれはなぜかと言うと、銃口が凍ってしまったら終わりだから。僕は銃の免許を持ってるからわかるけど、あそこが凍ったら詰まってしまって、撃ったときに破裂するんだ。そうしたら手榴弾と同じで、自分がバラバラになりますよ。覚えておかないと駄目だよ!

「レヴェナント:蘇えりし者」

「チリ33人 希望の軌跡」が教えてくれるリーダー論

「チリ33人 希望の軌跡」

──続いては「チリ33人 希望の軌跡」の感想を聞かせてください。これは2010年にチリのサンホセ鉱山で実際に起きた落盤事故がもとになっています。この事故のことはご存知でしたか?

知ってます、知ってます。これは大変だったね……。自分がもしあの中の一員として入っていたとしたら、まず精神的な問題を克服できるかが重要だなと思った。あとは「これはリーダーによって運命が決まるな」とも思ったんだよ。

──映画でも、地下700mに閉じ込められた33人の炭鉱夫の中で、マリオという男がリーダーシップを発揮して、全員の生還に結びつきましたね。

そう。それがキーポイントなんだよ。リーダーがどれほどの人物なのか。わかります? 限られた食料、限られた水、限られた空気、この配分によってどこまで持ちこたえられるか。たまたまこのリーダーが高い精神力を持ち合わせていたからよかった。そもそも彼はもとからリーダーだったわけじゃなくて、一隊員だったっていうのが奇跡のようだね。たまたまグループにああいう男がいて、本当に運がよかった。

藤岡弘、

──藤岡さんも、テレビ番組の「藤岡弘、探検隊」で隊長として活躍されていましたね。

僕はいつも万が一を想定してる。洞窟なんかに入るときも、僕はいつも隊員1人ひとりに確認するんですよ、「覚悟がないやつはここから去れ、そうでないと私は容赦しないぞ」と。それがそのあとの探検で大事になってくる。もし誰かが不平不満を言っても、「あのとき決意したんだろ、ならなぜそんなことを言うんだ?」って。容赦しないってことは、命まで絶つってことですよ。1人によって全員が死んでしまうか、1人の命を絶つことによって全員が助かるかという状況なら、リーダーとしては絶対に決断しないといけないんだ。

──この映画では、地下700mに閉じ込められた33人の話と並行して、彼らを救うために地上で奮闘した人々の物語も描かれています。事故発生から17日間は33人の生存確認も取れないまま救出活動を続けて、炭鉱夫たちが地上に生還するまでは69日もかかったわけですが。

現場にやって来た鉱業大臣が、どんどんたくましく変わっていくじゃないですか。マニュアルで対応できないような窮地に陥ったときに試されるのは、最終的には上に立った者の器ですよね。私利私欲でなく、大局的に見極められるかどうか。あとは地下に閉じ込められたどうしようもない弟を、地上から一生懸命救おうとする女性が出てきたね。あれが家族の絆。ほかにも愛人関係なんかも描かれてたけど(笑)。そういうドラマチックな面白味もあって、人間ドラマも楽しませてもらったよ。

──同じサバイバル映画でも、「レヴェナント」とは違った魅力がありました。

もちろん「レヴェナント」の中にもあったけど、集団の中での人間関係や、個人の内面の葛藤がより深いレベルで描かれていた。そうやって自分の人生を見つめ直す意味でも、この映画はいいかもわからないよ。僕らの身にもこういう事故が起こりえないという保証はないしね。僕はこの映画を他人事としては観れなかった! そう観れるとしたらある種幸せ者ですよ。

「チリ33人 希望の軌跡」

日本を背負っていく若者に、この2本を観て何か感じてもらいたい

藤岡弘、

──両作とも、絶体絶命の状況に追いやられた人間たちの勇姿が描かれていました。藤岡さんがこれまで経験した絶体絶命の状況を、話せる範囲で教えていただけますか。

「あのときあきらめていたら死んでたな」っていう話はいくつもありますよ。テレビの収録で、ベネズエラの150mの崖をロープを垂らして降りていったときに、事故が起きたことがあった。あれは俺じゃなかったら死んでたな。

──事故ですか!?

オンエア上は何もなかったことになっていたけどね。現地のケイバーたちは僕を素人だと思ってたんですよ。でも僕は「K2 ハロルドとテイラー」っていう映画でヘリコプターからロープでパーッと降りるような訓練もしていたから。ベネズエラでも僕があまりにも速いスピードで降りるから、腰に着けていた命綱の送り出しが間に合わなくて、絡まってしまった。でもメインのロープは僕が操作して降りて行っているので、空中でボーン!と数十mバウンドしたよ。胴がはち切れるかと思った。「このロープを離したら真っ逆さまに落ちる」と思ってグッとつかんで。地上から100mくらいの距離でそのまま15分くらい、死ぬ寸前までくいしばってたから、そのときのことはもう記憶喪失状態なんだよね。

──そのときも今までの経験があったからこそ、「このロープは絶対に離してはいけない」とわかったわけですよね。

そうだね。僕は父にとことん限界に追い込まれて訓練してきたから。武道の稽古なんてのは、道場の板の間でやるんじゃないんですよ。神社の境内の土の上、河原の砂、田んぼ、山の斜面とかそういうところ。道場で剣の戦いがあるか、こういうところで戦って生き残らなかったら意味がないだろう、と。最悪なのは田んぼのヌルヌル。こんなに恐ろしいところはないよ、すべるんだから。それでも体位の中心を取るように訓練していくうちに、体が覚えていくんだ。それで一瞬の生還のチャンスをつかめるんだよ。

──ありがとうございます。先ほどの映画のお話にもつながった気がします。

そうですねえ。とにかく僕は、日本を背負っていく若者に、この2本を観て何かを感じてもらいたいね。学校で学ぶことだけじゃなくて、人間世界に生きていくということについて、この映画からつかみ取ってもらわないと! これは楽しむだけの映画じゃないんだよね。……って、ちょっと持論を展開しすぎたかな(笑)。

藤岡弘、(フジオカヒロシ)

1965年、松竹映画にてデビュー。1971年には初代「仮面ライダー」として一躍名を馳せ、当初はスーツアクターも兼任していた。映画「日本沈没」「野獣死すべし」「大空のサムライ」やテレビドラマ「勝海舟」「特捜最前線」など多くの作品に主演。1984年にはハリウッド映画「SFソードキル」の主役に抜擢され、全米映画俳優組合のメンバーとなる。2002年より水曜スペシャル「藤岡弘、探検隊」の隊長として、アマゾン奥地やラオスの密林などでのサバイバルに果敢に挑む。著書は「あきらめない」「藤岡弘、の人生はサバイバルだ。」など多数。武道家としても知られ、世界各国で真剣による演武を行なっている。また世界数十カ国の紛争地域、難民キャンプへ救援物資を直接届ける支援活動も精力的に行ってきた。2016年3月には、仮面ライダー1号 / 本郷猛役で44年ぶりに主演し、企画段階から参加した映画「仮面ライダー1号」が公開された。

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