DIRECTORS #03 デヴィッド・フィンチャーの世界

DIRECTORS #03 デヴィッド・フィンチャーの世界

ミュージックビデオやCMの制作を手掛けたクリエイターが映画に進出する例は多い。彼らに共通する特徴は映像に対するこだわりだ。1980年代にマドンナやローリング・ストーンズなどのミュージックビデオを手掛け、そのセンスを買われて大ヒットシリーズの続編に抜擢されたのがデヴィッド・フィンチャーである。1992年、『エイリアン3』で映画監督デビュー。このデビュー作から彼の映像センスは異彩を放つ。色調を抑えた映像は、監獄惑星が舞台のこの映画にハマった。異生物にいつ襲われるかもしれない囚人たちの不安感をダークな映像が後押しした。
続く監督2作目の『セブン』では、退職間近の老刑事とブラッド・ピット演じるヤル気が空回りする若手刑事が、猟奇的な連続殺人事件を追う一週間を描いた。始終雨が降り続く陰鬱とした大都会のノイズと不条理な殺人、観る者は常にざわざわした緊張感を強いられる。そして迎える衝撃のラスト! 後味の悪い映画ランキングに必ずランク入りする映画にもかかわらず非常に人気が高いのは、意外性の高いストーリーとそれを表現する映像が見事にマッチした完成度の高さからだと言える。彼はこの作品で不動の人気監督の地位を築いた。
ほぼ四半世紀、映画を作り続けているフィンチャーだが、制作本数は10本と決して多くない。にもかかわらず『セブン』で主演したブラッド・ピットは気に入られたのか、その後『ファイト・クラブ』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』と10本中3本に起用されている。特に後者では、80歳の容姿で生まれ、年々若返るという、まさに数奇な人生を送る主人公を演じ、彼はこの作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。さらに作品賞や監督賞など、13部門でノミネートされ、これで名実ともにアメリカを代表する映画監督になった。
『ドラゴン・タトゥーの女』はスウェーデンが生んだ世界的大ベストセラーミステリー『ミレニアム』の映画化で、本国ではすでに映像化されていたが、改めてハリウッドが映画化した作品。6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグが主人公の雑誌記者を演じ、大ヒットした。さらにフィンチャーは、テレビドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の監督・製作総指揮も手掛け、2013年エミー賞で監督賞を受賞している。今回は、このシーズン3と共に、監督デビュー作からの傑作映画群がチョイスされているので、ぜひその映像美を堪能してもらいたい。

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