CULTURE#01 菊地成孔特別インタビュー(2)

CULTURE#01 菊地成孔特別インタビュー(2)

CULTURE#01 菊地成孔特別インタビュー(1)
「ガンダムにはフリージャズを!」からの続き
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物語はイオと、対するジオン公国軍ザクのパイロット・ダリルの対決を軸に展開してゆく。アグレッシヴな性格のイオと、仲間思いで温厚なダリル。
お互いの命を狙い合う究極のライバルならではの対比は、音楽でより際立ってゆくこととなる。
「原作では、イオが聴いているジャズは“ハードバップ”と呼ばれる比較的優しげなジャンル。対するダリルが好んで聴いているのはアメリカン50’sの“オールディーズ”と呼ばれるポップス。これを音として表現すると、(音楽としての)対比が際立って聴こえてこない可能性があるなと。だったらイオの聴くジャズを、もっと刺々しいフリージャズにしたら、と監督に提案しました」(菊地氏)
こうしてアバンギャルドで攻撃的なフリージャズ(イオ)に対し、メローなテンポで恋愛を歌うアメリカン50’sポップス(ダリル)という音楽の対比と、イオの印象的なセリフ「サンダーボルトにはフリージャズだ!」というセリフが生まれることとなる。
「信頼できる第一線のジャズミュージシャンを集めたので、ジャズ曲は非常にすんなりとレコーディングできましたね。逆に、50‘sポップス風の曲を創るなんていう経験はこれまでまずなかったわけで。物語の展開を匂わせながら“歌もの”の歌詞を書くのはとても楽しい作業でした」(菊地氏)
実はアニメとジャズというのは、これまでも全く無縁だったわけではない。誰もが知っている『ルパン三世』のテーマ曲、あれを手がけた大野雄二氏が本来はジャズミュージシャンだというのは有名な話。
「ただ、どうしてもあの印象が強すぎて『ジャズ=男と女の粋な物語』というイメージが付いてしまっている気がします。でも今回は、『宇宙の戦争とフリージャズ』という目新しい組み合わせにすることができた。今後のアニメとジャズ音楽の新しい可能性を示せたんじゃないかなと思います」(菊地氏)
宇宙空間で繰り広げられるハードな戦闘シーンと、そこに聴こえてくるエッジィなジャズのフレーズは、ジャズに反応しない人でも本能的に「カッコいい!」と思えるのではないだろうか。ある意味「一流ミュージシャンによる最高のジャムセッション」を映像と楽しむという、いわばPV的な楽しみ方もできるのだ。
また、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』で驚かされるのは戦場という非日常の中で感情がむき出しになっていく、その人間ドラマの生々しさ。
いわゆるロボットアニメにおいておなじみの戦闘シーンも、その1機1機には乗組員がいて、彼らには家族や友達がおり、複雑に絡んだ人間関係と、生と死の物語がある……それらの人間模様も丁寧に描かれている。ファーストガンダムを観て育った世代なら「あの一年戦争にこんな物語が!」という楽しみ方ができるし、何より時に残酷にすら見えるその物語は、さまざまな人生経験を経た“大人”の方がグッと来るはずだろう。
「アニメなんてわざわざ観ないよ」……そんな風に思っている人にこそ、観て欲しい『ガンダム』がここにある。

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